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電子計算機センター 分子研リポート1998 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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172 研究系および研究施設の現状

電子計算機センター

青 柳   睦(助教授)

A -1)専門領域:理論化学、計算化学

A -2)研究課題:

a) 高振動励起状態の理論的研究

b) 大気環境化学に関連する素反応のポテンシャル面とダイナミックス c) 分子軌道並列計算手法の開発研究

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) C H3C O ラジカルの解離速度定数 k(E )は R R K M 理論からの予想より一桁以上小さいことが鈴木(分子研)らの実 験で示されている。実験結果と R R K M 理論の不一致の原因として,実際の解離障壁がこれまでの ab-inito 計算よ り高いこと,R R K M による見積りでポテンシャル面の非調和性が十分に考慮されなかったこと,あるいは,反応 で生成される C H3C O ラジカルの過剰エネルギーの分布が偏っていることなどが示唆される。我々は,V al ence B ond型のモデル電子ハミルトニアンをトラジェクトリーの各ステップで対角化して得られたポテンシャル面上に おいて,IV R ,解離反応動力学を解析することで原因を考察している。

HC P 分子の電子励起状態における振動前期解離反応の動力学的研究を行った。実験的には,東北大学の三上教授 グループが,電子励起状態 1

1

における回転線の中に長寿命のものと短寿命のものが混在していることを見出し ている。そこで,波束動力学計算を行うためのポテンシャル曲面を作成し,R enner-T eller 結合を考慮した前期解 離過程の動力学計算を行っている。

b) 昨年より OC S の電子励起状態のポテンシャルエネルギー曲面と紫外光解離ダイナミックスの研究を行っている。 非経験的分子軌道計算により励起状態のポテンシャルエネルギー面を求め,得られたポテンシャル曲面上で量子 波束計算を行った。その結果,A ’ (1

1

)状態を経た解離過程では基底状態との非断熱遷移が,解離生成物(C O)の 回転分布を説明する上で重要な役割を果たしていることを見出した。しかしながら,実験的にブロードな吸収が 得られている吸収帯に対応する理論計算は吸収スペクトルに鋭い構造を予測した。振動励起した初期状態からの 光解離過程について新たに波束計算を行った結果,零点振動準位(0,0

0

)からの吸収よりも強い吸収強度を示すこ とがわかった。

化学反応の量子動力学は反応確率 N(E )に反映されており,理論的に N(E )を求める事ができれば,直接反応のミク ロカノニカルな速度定数 k(E ),あるいは温度依存性(k(T ))も導出できる。我々は,S eideman, Miller らの probability operator の方法を現実の4原子分子以上の化学反応に応用し,多原子系の反応確率を求めるために,Green 関数そ のものを評価するのではなく,状態ベクルトルへの作用を大次元連立方程式の反復解法によって評価する方法を 提案した。我々の方法は P rec ondi ti oner を用いて反復的に G reen 関数を評価する B orn 展開に類似しており, Preconditioner が G(E )に近いほど,GMR E S ,D avidson 法などの K rylov 部分空間法の収束は加速される。これまで に,行列サイズの数パーセントの幅の帯行列でも収束が得られ,逆行列として作用させるために必要な演算量を

3-9 研究施設

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研究系および研究施設の現状 173 激減させることを示した。

c) C84は C76についで大量に得られている高次フラーレンであり,24 個の構造異性体が存在するが,実験的に全ての 異性体の構造を予測することは困難である。本研究では非経験的分子軌道法による大規模な理論計算を行い,C84

(C2, D2, D2d)異性体の赤外スペクトル及び R amanスペクトルにおける振動構造を理論的に求め,異性体の同定にお ける指針を得た。基底関数には S T O-3G,3-21G 及び,D 95V基底を用い,それぞれの対称性において,制限付き HF 計算による構造の最適化と調和振動解析を行った結果,赤外及び R aman スペクトルにおいて,異性体に固有 の幾つかの特徴を見いだした。D2異性体間では,650,1670,1850 cm

-1

付近のピークが,C2異性体間では 900 cm

-1

以下の振動領域と 1300,1610,1980 cm

-1

付近のピークが,それぞれ各異性体を同定する「指紋」となることがわ かった。また,1300 cm

-1

以上の振動モードは C84分子の炭素ケージに沿った面内の振動モードであり,1000 cm

-1

以下の振動モードは C84分子の炭素ケージの面に垂直な方向に炭素原子が運動するいわゆる,breathing であるこ とを明らかにした。また,1000-1200 cm

-1

の領域に赤外吸収スペクトルの窓領域が存在することがわかった。

B -1) 学術論文

T. SUZUKI, H. KATAYANAGI, S. NANBU and M. AOYAGI, “Nonadiabatic Bending Dissociation in 16 Valence Electron System OCS,” J. Chem. Phys.109, 5778 (1998).

S. I. GHEYAS, T. URIS, S. HIRANO, H. WATANABE, S. IWATA, M. AOYAGI, M. NISHINO and H. OGAWA,

“Chemisorption of Deuterium on an Ultrathin Ge Film Deposited over Si(100)-2×1: Existence of a Dideuteride Phase,” Phys. Rev. B 58, 9949-9954 (1998).

C ) 研究活動の課題と展望

大気化学反応,燃焼反応等の化学反応素過程を理解する上で重要な,分子内エネルギー移動と反応の統計性・選 択性,非断熱遷移過程,を主な研究課題としている。今後,具体的な研究対象を表面反応,生体内化学反応等,化 学的に興味のある大規模系へ拡大してゆく上で必要な,電子状態計算手法の開発や,多自由度系の動力学計算手 法について研究を進める。ここでは,大規模系の電子状態直接計算と動力学計算を融合した全自由度を陽に取り 扱う方法論の他に,分子内エネルギー移動と反応の統計性・選択性に基礎を置いた自由度の分離が可能な方法論 の開発を目指す。

参照

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